【感想】栞と噓の季節 / 米澤穂信【小説】

雑記

本の紹介

米澤穂信 / 集英社

ベストセラーとなった『本と鍵の季節』の続編。
図書委員の堀川次郎と松倉詩門が、忘れ物の栞にまつわる一連の出来事の真相を追う。
連作短編だった前作と異なり、本作は長編となっており、
前作ラストから2カ月ほど先の時間軸を描いている。
2022年集英社より刊行。

各章のタイトルは
・栞と花
・栞と毒
・栞と噂
・栞と噓

こんな本

  • 『本と鍵の季節』に続く《図書委員シリーズ》の2冊目
  • ”忘れ物の栞” ”校舎裏のトリカブト” は誰が何の目的で用意したのかを追う話
  • 前作の設定や会話がたびたび引用される

あらすじ

”猛毒の栞をめぐる、幾重もの噓。
高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。
ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。
小さくかわいらしいその花は――猛毒のトリカブトだった。
持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。
そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。
誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか……。
「その栞は自分のものだ」と噓をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野とともに、ふたりは真相を追う。”
(Amazon販売ページより引用)

図書委員の高校2年生、堀川次郎と松倉詩門を主人公とする青春ミステリの続編。
忘れ物の栞に端を発する一連の事件を収束させるため奔走する堀川と松倉だが、真相を追い求める彼らの前に現れる人々は皆それぞれに”噓”を抱えていて…。

主な登場人物

堀川次郎

本シリーズ主人公の1人。図書委員の2年生。自己評価は控えめだが、松倉曰く「いいやつ」。物語は彼の視点を通して描かれる。

松倉詩門

もう1人の主人公。堀川と同じく図書委員の2年生。委員会を通じて堀川と知り合う。背も高く顔も良いため印象に残りやすい見た目をしている。

植田登

図書委員の1年生。素行不良の兄にまつわる事件に関して、かつて堀川・松倉に相談を持ち掛けた。嘘が下手。

東谷理奈

図書委員長の2年生。生真面目な性格で堀川・松倉とは折り合いが悪い。

岡地恵

写真部の2年生。コンテストに応募した写真が金賞を受賞した。

和泉乃々花

岡地が入賞した写真のモデルを務めた1年生。植田の小学生時代のクラスメート

横瀬

生活指導部の教師。思い込みや決めつけで断罪する傾向があり、生徒からは良い印象を持たれていない。

感想

前作が素晴らしかったため、続編となる今作への期待値も高かったが、十分応えてくれた。

長編となったことで前作のようにサクッと読める作品ではなかったが、会話のテンポの良さや謎解きの鮮やかさは変わらず楽しめた。

タイトルにもあるように”噓”がテーマの1つであり、登場人物ほぼ全員が”噓”をついている。
誰が、何のために、そして何が嘘なのかを推理しながら読むのも楽しい。

”毒”という緊張感のあるテーマが中心にある中、案外あっさりと結末を迎える。一連の出来事に決着が付いているので読後の余韻は前作に及ばないが、1つずつ謎を解き明かしじわじわと真相に近づく展開は今作ならではである。

前作のラストから今作に至るまでに松倉がどのような選択をしたのかが示唆されるシーンは胸が熱くなった。未読の方は前作を、既読の方は前作の最終章だけでも読み返してから本作を読むことをお勧めする。

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